こんにちは、たけんちです。
今回は、「TFブレイクアウト!」徹底解説の後編になります。
まだ前編を読んでいない方は「TFブレイクアウト!」徹底解説!前編https://takenchitaxi.com/「tfブレイクアウト!」徹底解説!前編/
こちらを読んでいただいてからお進みいただければと思います。
タイトル
「TFブレイクアウト! 明確なルール、明快な売買」
著者
トウキョウフォックス
概要
パンローリング出版より2003年2月に発売
192ページ、税込み3,850円
(残念ながら現在は絶版となっています。)
はじめに
1.TFブレイクアウトの注意点
実社会では、時として手順が前後してもよしとすることがありますが、しかし、TFブレイクアウトでは
力の確認の順番が前後することは許されません。
TFブレイクアウトは、トレンドに反発する力が強くなり、トレンド方向への力が弱くなった場合だけ、トレンドが転換したと判断します。
これは、順番が前後して、「トレンド転換ではないか?」と勘違いしやすいケースのチャートです。
※一見すると、三尊天井のネックラインを割り込み、Eが最高値Cを更新できずに上げる力が弱くなっているように見えますが、相場の上下のなかの許容範囲の動きです。
この状態から高値を更新していくケースは頻繁にあります。
こちらも同様にEが最安値を更新できないで「戻り高値」Bを上に抜けてもトレンド転換にはなりません。
以上の点を踏まえて、第2章から実践に近い形で取引の説明をしていきましょう。
第2章 TFブレイクアウトの取引方法
1.取引の概要
•損切りについて
※最初の損切りポイント
まずポジションを建てたら、損失の拡大を予防するために、損切りポイントを決定します。
最初の損切りポイントは、上げトレンドへ転換してポジションを建てた場合、直近の「最安値」の下に置きます。
また、下げトレンドへ転換してポジションを建てた場合、直近の「最高値」の上に損切りポイントを置きます。
理由は、エントリー後に直近の「最安値」もしくは「最高値」を更新すると言う事は、トレンド転換の判断が間違っていた事を意味するからです。
直近の「最安値」を更新すれば、ほぼ間違いなく下げトレンドが継続されていますし、直近の「最高値」を更新してしまう場合は、ほぼ間違いなく上げトレンドが継続している状態と言えるからです。
※損切りポイントの変更点
TFブレイクアウトには明確な2つの損切り方法があります。
1つはトレンド転換で、
もう1つはトレイリングストップです。
1)トレンド転換での損切りとは
これまで説明してきた方法を使い、上げトレンドから下げトレンドへの転換が確認出来た時、またその逆の時に、ポジションを決済します。
例えば、下げトレンドから上げトレンドへの転換を確認して買いエントリーしているのに、その後上げトレンドから、再度下げトレンドへの転換を確認してしまった場合、持っているポジションを決済(利食いになるケースもあります)します。
2)トレイリングストップでの損切りとは
トレイリングストップとは、「高値」あるいは「安値」が更新されるごとに、損切りポイントを移動していく方法です。
売りポジションを建てた場合、新たな安値を形成するたびに、損切りポイントを下げていき、買いポジションを建てている場合は、新たな高値を更新するたびに、損切りポイントを上へ移動していきます。
3)トレイリングストップの移動条件
トレイリングストップは、「押目」を下に割れることなく高値を更新した時に、次の「押目」の下へ移動します。
(もし「押目」を下に割れた場合、トレイリングストップを移動しないのは、損切りポイントが近づきすぎてしまうからです。)
高値Jを更新すると、押目Gの下からIの下へと損切り位置を移動します。
次に、Lの高値を上に抜けると、トレイリングストップは押目Iの下から押目Kの下へ移動します。
直近の「高値」とトレイリングストップの間に1つ「押目」が入る感じです。
※トレイリングストップの判断は、直近から2つ目の下(上)と覚えておくと良いでしょう。
TFブレイクアウトは、トレンド転換による損切りと、トレイリングストップによる損切りを併用することで、二重の安全装置が効きます。
•利食い目標値
続いて、TFブレイクアウトには3つの利食い方法があります。
1つは、損切りの項でご説明した通り、
トレンド転換による決済と、
トレイリングストップでエントリー位置を超えて決済した場合です。
もう1つの利食い方法は、
利食い目標値を決めて利食いを行う方法です。
(利食い目標値に到達するまでは、トレイリングストップとトレンド転換を使って、リスクを管理していきます。)
最後の1つは、
複数のポジションを建て、その一部を利食い目標値で利食い、残りをトレイリングストップとトレンド転換でリスク管理をしながら利を伸ばしていく方法です。
この方法では、継続的に少しづつ儲けながら、時々大きく儲ける事も可能ですが、ポジションが大きくなる分だけ、負けるときの損失も大きくなります。
トレンドが長く続く銘柄では、トレイリングストップとトレンド転換を使ってポジションをキャリーするタイプの利食い方法が合っています。
短期的にトレンドが転換してしまう銘柄の場合は、利食い目標値に到達した時点で全決済してしまう方法がよいでしょう。
複合的に状況に応じて変更していく事も考えながら決済していくと面白いと思います。
1)利食い目標値の考え方
著者は利益とリスクのバランスを考え、リスクリワードを1対1で考えているとの事です。
2)利益とリスクのバランス
利食い目標値を決定する場合、最も重要なのが利益とリスクのバランスです。
こちらの図は利益と損失の割合を変えて勝率ごとに表した表になります。
この表を見ると、勝率とリスクのバランスから、おおよそどのくらい儲かるかが分かります。
横の項目は利益と損失の割合
縦の項目は勝率を表しています。
横の項の左上300%とは、リスクリワードが3対1、利益300円に対して損失 100円を意味します。
縦の項の一番上90%とは、10回の取引で、9勝1敗を意味しています。
横の数字が300%、縦の数字が90%のところを見てみると、260とあります。
これは、利益と損失の割合が、3対1の場合に勝率90%の取引をすると、1回あたり平均で260円の利益を手にすることを意味します。
(あくまでも理論値になりますので、実際の取引の際には、スプレッド、スリッページなども考慮しなければなりません。)
そこで、TFブレイクアウトの勝率はというと、おおよそ75%です。
勝率75%、利益とリスクのバランス100%(リスクリワード1対1)を見てみると、収益は50になっています。
勝率75%で利益とリスクのバランスが120%の場合は、65になります。
もし、利益とリスクのバランスを上げる事で勝率が5%下がったとしても、収益は54あります。
これならば十分にトライする価値があるのではないでしょうか?
補足
•バーチャートについて
実際の取引は日足や時間足を使うので、時間の概念が入ります。
時間の概念は無視できず、寄付、高値、安値、終値、が分かればバーチャートでもローソク足でも構わないそうです。
下記バーチャートを使った実際の日足チャート(7751キャノン)になります。
ローソク足とは違い、ヒゲがないので実体かヒゲかで判断に悩むこともなく、高値と安値の見分けがしやすいのがメリットだと思います。
※バーチャートの注意点
Eは一見「戻り高値」に見えますが、「戻り高値」ではありません。
なぜなら、直近に「安値」を付けたCバーの「高値」を上に抜けていないからです。
バーチャートには時間の概念が入っていますので、バー全体を一連の流れとしてみます。
Cバーの場合、このバーの「高値」を含めたバー全体が、1つの「安値」(流れ)と考えます。
したがって、Cバーの「高値」も「安値」の一部ですから、Cバーの「高値」を上に抜けなければ、「戻り高値」になるための「戻す力の限界点」とは考えられないのです。
•「戻り高値」とは、直近安値の最安値バーの「高値」を上に抜き、再度「最安値」を更新するまでにできた「高値」を言います。
•「押目」とは、直近の「最高値」バーの「安値」を下に割れ、再度「最高値」を更新するまでにできた「安値」を言います。
2.トレンド転換の実例
まずは、現状のトレンドを正しく判断することで、正しいブレイクアウトポイント=エントリーポイントを見つけることが出来ます。
図は6752松下電器(現パナソニック)の日足チャートです。
高値のAとCとEが切り上がり、押目のBとDとFも切り上がっていますので、上げトレンドと判断することが出来ます。
その後、押目FをHが下抜けましたが、この段階ではまだトレンドが転換したとは考えません。
更に4日後のチャートです。
押目FをHが下抜けた後、いったん値を戻して高値Iを付け、更にJが安値Hを下抜けることにより、高値Iが「戻り高値」Iとなり、これでトレンドが転換した、と判断することが出来ます。
3.利食い目標値とトレイリングストップの併用取引
利食い目標値とトレイリングストップを併用して使う方法は、トレイリングストップでポジションをキャリーする方法の応用だと考えて下さい。
トレイリングストップでポジションをキャリーする場合、長いトレンドに乗れば大きな利益を手にすることが可能です。
しかし、トレンドが短く変動値幅が大きくない場合は、利食う事が出来なくなります。
※大きな利益が欲しいがリスクを少しでも圧縮したいと考えるならば、トレイリングストップでキャリーするほうの比重を重くします。
※手堅く儲けて少しだけ夢が欲しい、と考えるならば、利食い目標値で決済する比重を重くします。
相場の状況や、ご自身の資金量などに応じて臨機応変に決定するのがよいでしょうとの事です。
上記の図は、TFブレイクアウトでのエントリー、利食い、損切りの基本形です。
上記の図は、利食い目標値に到達後、一気に値を下げた状態を表したグラフです。
フィルター(スプレッド、スリッページ、手数料等)を1ティックとして、リスクリワードを1対1にした場合。
ブレイクアウトポイントから損切りポイントまでは32ティック
ブレイクアウトポイントから利食い目標値までは29ティック
(フィルターを考慮するため、厳密には1対1にはなりません。)
ブレイクアウトポイントでポジションを4つ建てて、利食いと損切りのバランスを変えた場合、損益は次のようになります。
利食い目標値の利食い トレイリングストップ 損益
2つ(58) 2つ(24) 34
1つ(29) 3つ(36) -7
3つ(87) 1つ(12) 75
この数字だけみれば、利食い目標値で利食った枚数が多いものが一番儲かります。
しかし、利食い目標値に到達後も、そのまま値を上げ続けた場合はどうでしょう?
このように利食い目標値に到達後も、ブレイクアウトポイントから更に60ティック上まで値を上げたとしたらどうなるでしょう?
利食い目標値の利食い トレイリングストップ 損益
2つ(58) 2つ(120) 178
1つ(29) 3つ(180) 209
3つ(87) 1つ(60) 147
すべてのポジションが利益になるこの場合ですと、ご覧の通りトレイリングストップでキャリーした枚数が多いものほど儲かることになります。
このようなことを念頭に置き、自分にあった利食い方法のバランスを見つけておくことが大切です。
第3章リスクマネジメント
〇避けられるリスクと、避けられないリスクについて
マーケットには、様々なリスクが存在しています。
そのなかには、我々自身の力で軽減できるリスクと、回避できないリスクがあります。
例えばアメリカ同時多発テロや東日本大震災など、最近のコロナ騒動もしかりです。
本章では、回避できるリスクとして、破産リスクについて解説していきます。
1.マネーマネジメント(資金管理)
〇損失に対する心のメカニズム
破産しないまでも、投資資金を失うのは非常につらいことです。
損失が出るたびに、その損失で「何が出来た」「何が買えた」などと考えてしまいます。
この未練や執着は、損失を拡大させる大きな原因です。
たとえ明確な損切り基準があってそれを実行できていたとしても、未練や執着から完全に脱することは出来ません。
ましてや、明確な損切り基準を持たない手法では、損失の拡大を防ぐことは出来ません。
損失の根本的な原因は、ポジションを建てる事になります。
ポジションを建てなければ、損失を出すことはありません。
と言う事は、未練や執着を持っていると、トレード自体が出来なくなってしまいます。
未練や執着を抑制してトレーディングで利益を上げる為には、1回に投入する資金の比率を小さくするのが効果的です。
1回に投じる資金が小さければ、失う事への恐怖心も小さくなり、平常心で取引に望めます。
つまり、資金配分を上手に行って、破産リスクを軽減することが、マネーマネジメントになります。
〇マネーマネジメント(資金管理)の役割
トレーディングとは、儲ける事がすべてです。
誰もが儲ける為に市場に参加していますが、全部の取引で勝てる訳ではありません。
リスクを取ってリターンを狙うのがトレーディングですから、リスクを計算にいれて取引しなければなりません。
マネーマネジメントは手痛い損失を避け、かすり傷程度の損失ですませるための重要な資金管理法なのです。
〇TFブレイクアウトのマネーマネジメント(資金管理)
TFブレイクアウトの手法では、明確な損切り基準があり、利食いの方法も決まっています。
したがってTFブレイクアウトでは、1回に投入する資金を決定することがマネーマネジメントの目的になります。
1回の取引数量=総資金÷(リスク×負け定数)
総資金=口座残高
リスク=エントリーした時点での、損切りポイントまでの値幅
負け定数=連続して負ける可能性のない数
バックテストをして、連続して負ける回数の平均値を割り出します。
(FXですと、通貨ペアにより値動きの癖が変わってきますし、株式ですと、銘柄ごとに出来高が違いますので値動きの特徴も変わってきます。
それぞれにTFブレイクアウト手法を使い、バックテストを行って「負け定数」を割り出していくのは、非常に手間がかかると思いますので、著者の例を挙げておきます。)
著者によると、バックテストの結果、3回連続して負ける取引があるそうです。
まれに4回はあるが、5回連続で負ける事はなかったそうです。
ですので、この場合の「負け定数」は5と言う事になります。
しかし、バックテストで連続した負けが4回あったとしても、5回連続して負けることがないとは言い切れません。
おそらく6回連続、7回連続して負ける事が起きる事もあるかも知れません。
そこで、10回連続して負ける事はほとんどないと仮定して、負け定数を「10」に設定されたそうです。
負け定数に正確な決まりはありませんが、数を大きくすれば破産するリスクは低くなりますが、儲けも少なくなりますので、その辺りは考慮して、任意に決めて良いそうです。
〇資金配分
では、100万円の投資資金があると仮定して、ドル円(1ドル100円と仮定)で一回の取引数量を割り出してみましょう。
ドル円の1回の証拠金は1万通貨で100円×1万=100万円
国内のFX業者で取引するとして、レバレッジ25倍で計算すると、100万円÷25倍=4万円
総資金100万円÷(証拠金4万円×負け定数10)=2.5
つまり、1回の取引で建てるポジションは2.5ロットと言う事になります。
このトレードで損切り50pipsを計上したとして、2.5lot×50pips=125pips
つまり、12,500円の損失になります。
総資金100万円の1.25%をリスクに当てたトレードをすることを、あらかじめ想定してエントリーすることが出来ます。
損切りを100pipsにすると倍の25,000円の損失、総資金に対して2.5%のリスクになります。
仮に負け定数(連続して負けることがない回数)より少ない9連敗したとして、25,000×9回=225,000円
総資金100万円の22.5%になりますが、最初の損切りをした後の総資金は 100万円-2万5千円=97万5千円になりますので、つぎのトレードでは、総資金97万5千円に対するロット数は、
総資金97万5千円÷(証拠金4万円×負け定数10)=2.43ロット
になりますので、厳密に9連敗した場合
1回目 100万円 2.5ロット
2回目 97.5万円 2.43ロット
3回目 95.07万円 2.37ロット
4回目 92.7万円 2.31ロット
5回目 90.39万円 2.25ロット
6回目 88.14万円 2.20ロット
7回目 85.94万円 2.14ロット
8回目 83.80万円 2.09ロット
9回目 81.71万円 2.04ロット
もし仮に9回連続して負けた場合、総資金は81万6千円になり、1回の取引で2.04ロットを建てることが出来ます。
つまり、総資金に対してこのくらいのリスクであれば、失う恐怖を感じる事もなく、平常心でトレードをすることが出来るのではないでしょうか?
ちなみに、著者は負けが続いたら取引を中止して、取引方法を再検討するべきであるが、5回連続で負けた経験はないそうです。
今は機能しているTFブレイクアウトも今後永久にワークし続ける保証はなく、同じ手法を使う人数が増えるとワークしなくなる傾向があります。
臨機応変に対応して、破産リスクを回避することが望ましいとおっしゃっています。
〇バックテスト
バックテストは、取引をする前に必ずやっておかなければなりません。
•バックテストの目的
銘柄ごとに最良の取引方法を見つける
使う足の長さや、時間軸、利食いの方法によって収益が異なる
取引の方法を少し変えるだけで、収益が劇的に変化する場合がある
取引に慣れて経験を積める
どのくらいの頻度で負けて、連続負け回数がどのくらいあるかを知ることが出来る
など様々なメリットがあります。
〇集中力
トレーディングを行うには、非常に高い集中力が必要です。
微妙な値動きでトレンドを判断しますので、バー(ローソク足)1本にも気を配り、基準となるバーかどうかを判断しなければなりません。
この判断のひとつひとつが収益を大きく左右するといっても過言ではありません。
人は好きなことをしている時は、高い集中力を維持することが出来ます。
集中力を持続させることで、人為的なミスを軽減できます。
どんなに優れた手法を用いても、人為的なミスを起こしては、儲ける事は出来ません。
あとがき
仏教の教えに八正道(はっしょうどう)があるそうです。
八正道とは、お釈迦様の教えで、人間は生きていること自体が苦しみであり、その苦しみから逃れるための8つの方法があるそうです。
人間の苦しみの多くは、欲から派生する未練や執着がもたらします。
瞑想では、すべてのことから精神を開放し、精神を無に集中させます。
無はすべての始まりであり、無であるから新しいものを手にすることが出来るのです。
著者もこれにならい、自らの持つすべての知識を公開し、無になることにされたそうです。
これにて、徹底解説!「TFブレイクアウト!」を締めくくりたいと思います。
私がこの本に出合って、実際に資金を投じてこの手法を試し、いかに優れた手法であるかを身をもって体験しているところです。
まだまだ私自身未熟な部分が多く、感情に振り回されたトレードをしてしまう事も時々あります。
損切り位置が明確であるのに、含み損を抱えていると落ち着いていられなくなります。
しかし、「TFブレイクアウト」の基本に乗っ取り、この手法を信じてトレードを行って、大きな利益を手にしていることも事実です。
2003年に書かれてから17年も経っていますが、いまだにこの手法は有効に使えると思っています。
最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
今後もこのように良質な本に出合いましたら、またご紹介させて頂きたいと思います。
では
2020年9月20日