FXのスワップ投資とは、金利の高い通貨を買って、金利の低い通貨を売ることです。
金利の高い通貨の代表格といえば、南アフリカランド・トルコリラ・メキシコペソの3通貨です。
これらの高金利通貨を買って保有するだけで、二国間の金利差を毎日受け取ることができる手法です。
しかし、これらの国々は政治が安定しておらず、紛争が勃発する可能性などもあり、長期で保有するには適していません。
さらにどのFX会社でも同じ金額をスワップ金利として受け取れるわけではないので、どの会社が一番スワップ投資に適しているか見極めるのも非常に難しい問題です。
スワップ投資とは、高金利通貨を買って保有しているだけで儲かる手法かと思えば、実はそう簡単には儲からない仕組みになっているのが、現実です。
為替リスク、何時に発生するものなのか?マイナススワップへの対応など、「スワップ投資の落とし穴」について徹底的にご紹介します。
スワップ投資の落とし穴
現在国内で取引されている各国の政策金利はご覧の通りです。
トルコ | 19.0% |
メキシコ | 4.0% |
南アフリカ | 3.5% |
アメリカ | 0.25% |
カナダ | 0.25% |
イギリス | 0.1% |
オーストラリア | 0.1% |
ユーロ | 0% |
日本 | -0.1% |
トルコの19%が最も高く、日本の-0.1%が最も低くなっています。
トルコリラ円のロングポジションを持っているだけで、年率19.1%もの金利差を日割り換算して毎日受け取ることができるのが、スワップ投資の最大のメリットです。
年利 = 年間スワップ総額 ÷ 預入資金 × 100
しかし、トルコリラ円の価格は2015年の54円台から2021年の12円台まで大きく下落していて、ロングポジションの長期保有で受け取れるスワップ金利よりも、価格の目減りによる損失の方が上回ってしまい、利益の出ない投資法となっています。
さらにFX会社によって受け取れるスワップ金利の金額が違うため、年率19.1%のスワップ金利をすべて受け取れるとも限りません。
もう一つの落とし穴マイナススワップの罠
スワップ金利の発生するタイミングは、NY市場が終わる日本時間の朝6時前後(5:50~6:10頃)です。(冬時間は朝7時前後)
この時間をまたいで保有しているポジションに対してスワップ金利が付与されます。
スワップ金利が付与されるこの時間帯より前にポジションを決済してしまうと受け取ることができなくなってしまうので、注意が必要です。
土日は市場が開いていないので、2営業日後の水曜日のNY市場が終わったあとにその日の前日分と合わせて3日分のスワップ金利が一気に付与される仕組みはどのFX会社も同じです。
逆に、マイナススワップといって、トルコリラ円のショートポジションを持っている場合、スワップ金利を毎日このタイミングで支払わなければいけません。
高金利通貨のショートポジションを保有していると、毎日支払うスワップ金利よりも高い利益を出し続けなけれ利益になりません。
日々価格が下がり続けない限り、その日の利益分をマイナススワップが帳消しにしてしまうので、いつまで経っても利益のでないトレードになってしまいます。
つまり、トルコリラ円のロングポジションを保有していると、スワップ金利を受け取れる代わりに、値下がり分の損失が発生してしまい利益を出せません。
逆にショートポジションを保有していると、値下がり益をマイナススワップが帳消しにしてしまう可能性があるので利益を出せません。
どちらのポジションを保有していても儲かる確率が少ないトレードになってしまいます。
レバレッジを掛けなければ外貨預金にすればいい
FXの最大のメリットは国内では25倍、海外では1000倍近いレバレッジを効かせて少ない元手で多くの資金を動かせることです。
ある日あなたはスーパーで1ドル札が1枚100円で売られていたので、1万枚購入することにしました。1枚100円の1ドル札を1万枚購入したので、代金の100万円をレジで支払いました。その後あなたは1ドル札が品薄[…]
スワップ投資は基本的に長期間ポジションを保有し続けることがその醍醐味なので、レバレッジを掛けてポジションを保有し続けることは、資金効率を考えた場合あまり賢い選択とは言えません。
せっかくレバレッジを効かせて少ない資金で多くのお金を動かせるのに、長期間ポジションを塩漬けにして値上がり益を得られるのかどうかも定かではない不安定な新興国通貨のスワップ金利を狙うことが、理にかなっていないからです。
まったく使う予定のないお金で投資をするのであれば、外貨預金に預けるか、金利の高い国の債権を購入することで、満期になれば必ず決まった利率を受け取ることができるので、FXでレバレッジを効かせてやる必要性がないんです。
それでもどうしてもFXでスワップ投資をしたいという人には、ユーロドルのショートポジションでのスワップ投資をおススメします。
スワップ投資にはユーロドルがおすすめな理由
現在(2021年6月)ユーロの政策金利は0%
アメリカの政策金利は0.25%
トルコリラやメキシコペソに比べるとハナクソ並な金利差ですが、世界で一番取引量の多い通貨ペアなので、二国間(ユーロは経済圏)の通貨の信用は絶大です。
さらに、アメリカの中央銀行は、近く量的緩和策の縮小を表明する可能性があり、段階的に政策金利を引き上げていくことによって米国経済の回復を目指しています。
これにより、市場に流通する通貨の量が減るので、米ドルの価値が上がる可能性が期待されています。
つまり、ユーロドルが下落(ドル高)方向へ進む可能性が高まり、長期でショートポジションを保有する場合、スワップ金利を受け取りながらインカムゲイン(利ザヤ)を稼ぐことにもなり、一石二鳥のトレードとなります。
FX会社ごとのユーロドルのスワップ金利を比べてみると、
FX会社 | 買い | 売り |
-28円 | 17円 | |
-21円 | 18円 | |
-24円 | 21円 |
(1万通貨保有時に付与されるスワップ金利を1ドル100円として換算)
1万通貨のポジションに対して21円から17円と比較的高い金額となっています。(21円×365日=7,665円/年)
ユーロドルの週足チャートを見ても、2018年2月に付けた高値1.255ドルからユーロ安ドル高が進んで、2020年からユーロ高ドル安に転換しています。
今後ドル高気運が強まると、ユーロドルの下落が考えられるため、スワップ金利を受け取りながら、インカムゲインを得られる一挙両得なトレードができる可能性を秘めています。
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まとめ
スワップ投資の落とし穴は、金利の高い新興国通貨のロングポジションを保有していても、価格の値下がり分の損失の方が大きくなり利益を出し続けることが困難なことです。
さらにFX会社によって付与されるスワップ金利が違うため、ポジションを建てたときにキャンペーンで高いスワップ金利を受け取れていても、翌月にはお得感のない金額になってしまうこともあるため、どのFX会社でスワップ投資をするのかを見極めるのも重要な問題となります。
スワップ投資を逆手に取り、高金利通貨を売ってインカムゲインを得ようとしても、高いマイナススワップを毎日支払わなければならず、一日の利益を帳消しにしてしまう可能性もでてきます。
FXをやるメリットは、レバレッジを効かせられることなので、わざわざレバレッジを効かせてリスクの高い新興国通貨のスワップ投資をするのなら、外貨預金か外債を保有する方が理にかなっています。
もしどうしてもスワップ投資をしたいのであれば、ユーロドルのショートポジションがおすすめです。
アメリカの金融政策でドル高が加速する可能性が高く、ユーロドルのショートポジションで得られるスワップ金利と、インカムゲインの両方を得られる可能性があるためです。
このように、スワップ金利狙いの長期保有はリスクが高く、FX会社のサジ加減にも左右されてしまうため、あまりおすすめはできません。
ただ、スワップ投資の最大のメリットはポジションを保有しているだけでスワップ金利とインカムゲインの両方を得られる可能性を秘めていることです。
これから起こる政治や経済の情勢をしっかりと見定めて、二国間の金利差をうまく受け取ることができれば、何もしなくても毎日口座残高が積みあがっていく夢のようなトレードが実現するかもしれません。
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